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この古代ローマ1世紀のインタリオの構図は、知的好奇心をかき立てられる非常に興味深いものです! 例えて言えば判事絵のようでもありますね。直接的に表現するのではなく、主人公に表現したい出来事を暗示させる物を持たせているのです。 ゼウスが左手に丸い物を持っていますが、これを何と見るかによって面白い解釈ができるのです! 僕はこの美しいインタリオを彫った人と注文した人は、単なる権力者や富裕な人たちではなく、知的好奇心と高い美意識を持った人に違いないと思っています!! 19世紀ぐらいのアンティークジュエリーでも、それを作った人や作らせた人を想像する楽しさがあるのですが、それが2000年以上も昔の古代ローマ人となれば、尚更です。 このインタリオが作られた古代ローマ1世紀は、日本で言えば弥生時代で、倭国の女王『卑弥呼』よりも約100年以上も前なのです! 古代ローマと日本の弥生時代の文化レベルの如何に大きな差があったかが分かるというものです。 そしてこのブルーカルセドニーのインタリオが、如何に古い年代の貴重なエンシェントジュエリーであるかも納得して頂けると思います。 |
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漢委奴国王印(かんのわのなのこくおういん、漢委奴國王印)は、日本で出土した純金製の王印(金印)である。西暦57年 この純金製の王印(国宝)は、ブルーカルセドニーのインタリオ(ゼウス&ヘルメス)が作られた頃に近い物なのです。 |
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『ゼウス&ヘルメス』 インタリオ 古代ローマ1世紀 左=ゼウス(ジュピター) 鷲=ゼウスの使い、もしくはゼウスの化身。 右=ヘルメス(マーキュリー) 神々の伝令使、とりわけゼウスの使いであり、旅人、商人などの守護神。 アトリビュート(属性) ゼウスが左手に丸い物を持っていますが、これを何と見るかによって面白い解釈ができます。 まず、パテラというワインを入れる丸い盃であるというのが一つの解釈で、葡萄酒を地面に注ぐという儀式(libation)を描いているというものです。実は、こちらの解釈の方が現実的で、コインなどにもその場面が描かれているものがあります。 しかし、ゼウスがヘルメスに伝令をする場面はギリシャ神話に多くでてくるので、これだけでは、別段意味する所はなさそうです。そこで、他の可能性としてゼウスが持っているのは丸い陶片(オストラコン)と考えてみたらどうなるでしょうか? 陶片は古代ギリシャで投票するときに使用するものです。 このインタリオの場面は、三人の女神の内、誰が黄金の林檎に相応しいかを争い、ゼウスは仲裁するために「イリオス王プリアモスの息子で、現在はイデ山で羊飼いをしているパリス(アレクサンドロス)に判定させる」こととした、つまり、『パリスの審判』(美人投票ならぬ美神投票)を陶片で暗示しているのだと考えられるのです。
それで、ゼウスは通常は雷のシンボルを持った姿になっています。 ところが、このインタリオではオストラコン(陶片)を持たせたので、雷の代わりに鷲を加えてアトリビュート(属性)としたのです。 このことから画家の好む主題の一つとなり、ルーベンスを始め、多数の画家が『パリスの審判』というタイトルの絵を描いたのです。 |
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ゼウスが左手に持っているのは、このようなオストラコンかもしれません。 | ||
雷のシンボルを持ったゼウス AD.250 大理石像 234cm 1680年にスミルナにて発見されたゼウス像 |
ヘルメス 紀元前5世紀のギリシアの原物を摸した、紀元前1世紀後半から紀元2世紀初頭のローマのヘルメス像 |
←パリスの審判を描いた土器。ルーブル美術館蔵。 右から、パリス、エルメス、オストラコン(?)を持った女神達。輪が透けている様子が描かれているので、パテラ(ワインの盃)ではない。 |
←同じ場面を描いた同美術館の所蔵品。 |
人物が持っているパテラには取手がなく底に突起がある。さらに、酒を大地にこぼしているので、円で描かれている。 正円で描かれた盃は、ルネサンス以前は、むしろ普通に見えたことだろう。さらに酒をこぼしているという事が正円での表現を説明する。椅子の四角い部分も同じで、神が体をひねることによって、バランスを取っている感じさえするといったら穿ち過ぎだろうか。 |
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(上)パテラを持つゼウス。(ローマ時代のコイン) |
『パリスの審判』 ルーベンス画 (1636年) ナショナルギャラリー蔵 |
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『トロイアの木馬の行進』 ジョヴァンニ・ドメニコ・ティエポロ画 |
こような小さなインタリオでは、ストーリー性のある複雑な構図の物は彫るのがとても難しいので、極めて希な物なのです。しかもゼウスの体の筋肉美で分かるように古代ローマでもトップレベルの彫りなのです。 これぐらい小さな石にこれだけ複雑な構図を彫れるのがインタリオの特徴で、カメオでは不可能なことです。 |
『ゼウス&ヘルメス(パリスの審判)』 |
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ベゼルの裏に模様を打ち出してあるのがこの年代の特徴です。 |
【なぜ古代のインタリオがはめられた17世紀の金の指輪がとても珍しくて、その為に高価なのか】 ローマと他の古代の都市の周辺で、何世紀にも渡って、古代の金の装飾品が、通常は、金を溶かす為に発掘されてきました。 1000AD までには、古代ローマの考古学の遺跡の発掘はとても儲かるビジネスになっていました。 768AD カール大帝(「ヨーロッパの父」と呼ばれ、現代におけるEU統合はしばしば「カールの帝国の再現」と称されることがある)の王冠はアーヘン大聖堂にあり、古代ローマのカメオが多数ついています。 ローマの教皇は、古代の美術品のもっとも裕福なコレクターでしたが、1550年頃までに彼らは、考古学的な発掘現場から全ての古代のカメオやインタリオを買っているのです。 だから、17世紀のリングで古代のインタリオが付いた物は、だれかとても特別な人の為に作られた可能性が高いのです!! 18世紀のリングでは古代のインタリオの物はもっと多くありますが、17世紀のものは希なのです。 |
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古代ローマのカメオとインタリオが付けられたカール大帝の王冠 | |
カール大帝の金の胸像(アーヘン大聖堂宝物館) |