金細工

【金は魔法の金属】

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ネックレス(クラスプ) イギリス 十九世紀

ゴールド バングル ブレスレット 彫金 アンティークジュエリー
ブレスレット フランス 十九世紀

アンティークジュエリーでは金は最も重要な素材ですし、他の金属にはない魅力に満ちた素材です。
人類の歴史が始まって以来、人が手にした金の総量はたかだか50メートルのプールに収まってしまうというほど、重く希少価値のある金属なのです。

しかし金のもつ真の魅力はその希少価値だけではなく、決して褪せることのない不滅の美しい輝きにあります。
今、僕の手元にあるジュエリーの中には古代ギリシャ紀元前6世紀(アルカイック期)の指輪がありますが、2700年もの時を経てもなおいささかも変わることなく、当時のままの美しい輝きを保っています。
これは他の金属では到底考えられないことで、銀ならとうに硫化し既に見る影もなくボロボロになっていることでしょう。
永遠に変わらないこと、それは金のジュエリーならではの魅力なのです!

それに金のジュエリーの魅力はそればかりではありません。
古代の金のジュエリーには、時の流れが、ひとつひとつ刻んだ微細な傷跡がありますが、それが自然のつや消しになり、古代のもの特有の得も言われぬ自然な輝きを生み出しているのです!
近代では、十九世紀末に不世出のジュエラーであるロシアのファベルジェが、そのすばらしい技術で、完璧なつや消しを施したジュエリーなどをいくつも生み出しました。
金特有の艶をあえて消した、その上品な美しさはアンティークジュエリーならではのものなのです。
しかし、まったく人の手によらない古代のジュエリーの自然な輝きはそれとはまた別の趣を持って、人の心を捕らえるのです!!

時がたっても変わらない魅力と、経年変化が生み出した魅力。その相反するふたつが共存しているからこそ、古い時代のゴールドジュエリーには他にはない独特の美が存在するのです!

また、美しさとは別に金をジュエリーにおける最も重要な素材に位置づけた性質に、その細工のしやすさが上げられます。

金は、適度な硬さを持ち。そして驚くべき展延性を有しています。たとえば10gの金なら、それはおよそ30kmの長さの金線にすることができるのです。(単位が間違っているわけではありません、これは事実です!)


適度な硬さは、硬度の高い銀では為し得ない繊細な細工を可能とし、また柔らかい鉛などにはない耐久性を生み出します。プラチナは固くしかも粘りけがあるので、石を留めたりミルを打つのには良いのですが、金のように繊細な模様を彫ったり、粒金を蝋付けすることには向かないのです。

アンティークジュエリーでよく見られる金線細工などは、この金の性質が生み出した特有のものです。

また、金の性質には融点が適度に低い、という点もあげられます。
金の融点は約1000度。細工の際には、金蝋という合金をもちいての溶接が使われました。700度の融点である金蝋と、金との融点の違いを用いて、粒金などの細工が施されています。
他の、たとえば銀などの金属では融点が高すぎて、金で行うような細かく大量の細工を行うことは難しいのです。

金細工の技術の頂点は、紀元前7世紀の古代エトルリア・ギリシャにありますが、それはこの金特有の細工がしやすく融点が高すぎない、という性質ゆえなのです。
古代の金細工を見た人は大抵、機械も設備もない時代に見事な細工が施されていることに驚かれます。

しかし、金細工やは本来ならば道具だけに左右されるものではないのです。(金細工以外のすべての細工にも言えることです)
高い火力を必要とせず、また複雑な道具がなくても可能な加工であるがゆえに、鉄器や青銅器よりも古き時代に金細工は生まれ、そして純粋に人の手によってのみ、数々の素晴らしいものが作られたのです。

道具や機械の発達は早く安く大量に作るのに役立つだけで、一点物を作るのには返ってマイナスなのです!

人間は楽をしたいと思うのが普通ですから、一度便利な機械を使うとそれに頼ってしまい、人間の手で物を作る能力が駄目になってしまうのです。

機械や道具の発展は、必ずしも技術の発展には結びつかないということを覚えておかれるべきでしょう。

最も古い金の装飾品は、およそ3000年前のものになります。
そのような昔から、人は金に魅了され、その魅力を引き出すべく様々な細工を考え出したのです。 Gen Katagiri

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