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カーブド・アイボリー 『黒い森の鹿』 |
うっそうと生い茂った樹木はとても立体感を感じる彫りで、所々開けられた隙間の奥にまで彫りを入れることでよりいっそうの立体感を出そうとしているのです! 気が遠くなるような沢山の葉を彫っているので、隙間の縁に一枚一枚の葉を彫ったうえに、穴を彫ってその奥に多数の葉が見えるような彫りが如何に大変なことかが解るというものです! こういう仕事は、もの凄い集中力と根気がなければ出来ない仕事です。 ちょっとでもミスをしたらすべて最初からやり直しなんですから・・。 |
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右側の樹木の表現も見事です! 樹木の木肌と右下の切り株に表現も秀逸です。 |
樹木の小枝の彫りは実に見事です! 左下のこんもりした葉と奥の肉眼では見えない程の葉の透かしは、とても人間業とは思えないほどです! |
牡鹿の彫りは圧巻ですね!! 黒い森の住人である作者ならではの観察力を感じますし、豊かな自然の中で生きていたからこその表現力だと思います。 牡鹿の頭部の微妙な立体感と首の毛の表現には見惚れてしまいます! 牡鹿の首から背中にかけてのラインや、胴体の立体感の表現も素晴らしいものです。 牡鹿の頭部と牝鹿の頭部の間に樹木の幹が見えますが、ここは非常に彫りにくい位置にも関わらず、途中の葉の茂りや根元の部分まで細密に彫ってあるのには驚かされます! 一番手前に牡鹿をその後ろに伏せてる牝鹿を彫り、一番後ろに葉を食べている牝鹿を彫っているのですが、三頭の鹿を隙間を開けて、それぞれを独立させて彫ってあるのです!! 右の牝鹿の頭部や後ろ左足も表現は下の拡大画像でお話致しましょう。 |
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僕はこのような象牙細密彫りの作品を、日本ではだれもその存在すら知っていない35年前から扱っていますが、複数の鹿のモチーフで、それぞれの鹿をこれだけ巧みに彫った作品は初めてです!! 想像をしてみてください一枚の象牙の板からこのようなポーズを彫り出すのが如何に難しいことか!! |
裏を見るとちょっと以外でしょ? でも中央の樹木が強度を持たせるのに重要な役目を果たしているのが解ります! 鹿や幹も裏から見ても結構立体感を出してあるのに感心します。 ブローチのピンと受けは、金ではなく粗末な物ですが、これもオリジナルなのです! 19世紀のドイツのカーブド・アイボリーのブローチは、当時は高価な物ではなかったということなのです。どんなに素晴らしい作品でも全部このようなピンと受けが付いているものなのです。 このことは、ドイツとスイスの国境付近の物価も安かった田舎で作られた物で、パリのような大都市の金細工師が作った作品などとは比較にならないほど、値段が安かったからなのです。 これだけの彫りが出来る職人の工賃が信じられないほど安かったことを考えると、何だか同情したくなってきます。 でも、このような素晴らしい作品を見ていると、恵まれた自然の中で貧しくても生き生きとした生活をして、毎日毎日良い物を作ろうとした職人の心意気を感じて、僕は心に熱いものを感じます! だから僕は昔からこの手のカーブド・アイボリーが大好きなんです!♪ だから、現代の作家と称する職人の出来損ないが、こういう物を復刻したと称して下手くそな物をアンティークの数倍もの値段でデパートで売っているのが許せないのです! ※ 上部の変色している部分はシールを貼った跡で、これは奇麗にすることが出来ます。 |
牝鹿の目とその下の皮膚のシワの彫りも良いですね〜♪ | 牝鹿の左後ろ足は地面に少しめり込んであるように彫ってありますが、芸が細かいですね〜♪ 作者はきっと完璧主義者に違いない! |