TOP (カタログ) |
メールマガジン | お問い合わせ (メール) |
Genと小元太の フォト日記 |
セミナー &クイズ |
アクセス・地図 |
ヴィネグレット ヴィネグレット(vinaigrette 仏)は、料理用語では酢を使ったソースやドレッシング のことですが、アンティーク用語では気付け薬入れのことです。ウエストが極端に細いドレスのせいもあるでしょうが、当時の男性にとって美しい女性とは、弱々しいものという概念がありましたから、上流階級の女性たちは、ことあるごとに卒倒(演技?)したようです。そしてその時必要な小道具がヴィネグレットだったのです。美の世界を追求するような毎日を過ごしていた人たちにとって、卒倒そのものが美しい仕草でしたから、それを演出する小道具のヴィネグレットはそれに相応しい美しい物でなければならなかったのでしょう。ヴィネグレットの中には鼻につ〜んと来るローズウォーター(酢にバラの花びらを入れたもの)などを布に染みこませて入れておいたようです。今なら香水を布に付けて入れておいても楽しいでしょうし、写真やアンティークの細密画のコピーを入れても素敵でしょう、小さな想い出の品を入れるも楽しいと思います。 希少価値のある美しいヴィネグレットは年代も古く、当時も僅かしか作られていないので、アンティークの展覧会や本などでもほとんど紹介されていないのが実情です。 Googleでヴィネグレットを検索してみると、ほとんどが料理用語で、美術品としての気付け薬入れは僕が扱ったあの栗の形のヴィネグレットだけですが、ずーっと後の8ページ目に1818年頃の実用品としてのヴィネグレットが出て来ます。これと比較するとこのエマーユのヴィネグレットが如何に特別に作られた美しいヴィネグレットであるかがお解り頂けると思います。 |
僕の勝手な想像ですが、ヴィネグレットを実際に使ったのは、卒倒した女性を介抱する男性だったのではと思うのです。卒倒した女性を抱いた男性の手にはヴィネグレットが・・・・、中を開けると彼の美意識を満足させるそれは美しい透かしの蓋が・・・。 ヴィネグレットは意中の男性を射止めるための重要な小道具だった。だからこそ、よくもここまでお金をかけて作らせたと思われる個性溢れる美しいヴィネグレットが存在するんだと僕には思えてならないのです。 |
ね、実に美しい透かしでしょ♪僕は蓋を開けた時に「お〜!!」と声を出してしまいました。これは金の板を糸鋸で引いたものではなく、繊細な模様を彫ってからタガネで切りとっていると思います。透かしは日本人が好きな軽やかな美で、日本の昔のお屋敷にはどの部屋にも素晴らしい透かしの欄間がありましたね。洋の東西を問わず、繊細で軽やかな美を好む人たちはいたということですね。そしてこのヴィネグレットのダブルの蓋を開ける時に感じるのは、170〜180年もの年月を経ても寸分の狂いも無いことです。まるで今作った物のようにガタツキが全く無く、すぱっとした収まり具合は心がすーっとする思いです。今も手元に置いてそれを見ながらキイを叩いていますが、こういう素晴らしい物が作れた時代があったんだなあと、しみじみ思います・・・。 |
この角度で見ると、このヴィネグレットが平面的な作りではなく、凹凸のある立体的な作りであることが解りますし、 側面も上下の縁もすべてエマーユ(七宝)を施してあるのがお解り頂けると思います。まず、金の模様を見てください。 皆さんは金色のエナメルで描いたものだと思っていらっしゃる方が多いと思いますが、これは何と彫り残してあるもので、黒と白の部分が金の板を彫り込んでガラス釉を入れ、炉で熱を加えてガラス質にしてあるシャンプレーベ・エマーユと言う七宝の技法で作られているのです。フラットな面ならまだしも、これだけ凸凹のある面を彫って美しい曲線を彫り残すことがどれだけ難しいことか、当時の第一級の腕の職人ならではの巧みな仕事だと断言出来ます! しかも普通のペンダントと違うのは表裏とも全く同じ細工をしていることです!! これはとても贅を尽くした物の証です!! |