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『音楽の捧げ物』 |
小枝の先端はさらに細い三本の枝になっていますが、その曲がり具合はまるで本物の小枝のような見事な造形です。 この繊細至極の彫金は、完全に立体的な作りなだけに想像を絶する難度の高い彫金です。 |
小さな木の葉を自然の小枝に感じるような位置に付けてあるのも作者のセンスが如何に素晴らしいものであるかの証です。 |
楽譜の裏は小さな点を打った模様がありますが、これも気の利いた装飾です。繊細至極の彫金は裏はもちろんどの角度から見ても全く手を抜いていない完璧な仕事です。 |
五個のルビーは色が揃っていませんが、もしかすると注文主が持っていた何らかの思い出がある石を使ったのかも知れません。 ルビーの左の少し離れた位置の装飾も気が利いていますし、右側の鋭角な形の彫金も見事です。 |
ルビーの裏の彫金も素晴らしい物で、これはすべて彫り出しているのです。作者の良い物を作ろうという心意気を感じます。 上下の縁には肉眼では見えないほどの超繊細な模様が彫られていますが、もう、ここまでくると言葉出ないほどの感動的な彫金です。 |
右上の装飾は単なる装飾ではありません。実際にペンを持って使う時に指に触れる部分で、ちゃんと持ちやすいようにバランスなども考えて作っているのです。毎日使う実用的なペンはないにしても、ちゃんと使うことも考えて作ってあるのが素晴らしいです。 |
細長く先端が細くなった円柱で、しかも実際の小枝のような不規則な形にテーパー加工するのは、いったいどうやったら出来るんだろうと思う超難しい細工です。 |
そしてもっと難しいのは、小枝のような模様をタガネで付けることです。僕は38年もこの仕事をしていますが、こういう彫金は見たとこがありません。 単に正確に模様を彫金するのでなく、実際の木肌のようにタガネで模様を打つことは、高度な技術だけでなくセンスが必要です。 アンティークの優れた金細工の中には一点の乱れもない完璧な仕事の物もありますが、このペンのような技術の良さだけでは作れない物に、僕は強い魅力を感じます。 |
このゴールドペンは金の色も実に良い色です。もしすると18K以上で20Kぐらいあるかも知れません。 |
小枝の所々にある枝を切断したような部分も自然の小枝のようで素晴らしいです。 |
作者が徹底して自然の小枝のように感じられるように、造形も細工も意識して作っているのが分かります。こういう仕事ぶりを見ていると、作者はこのペンを作ることが楽しくてしょうがなかったんあろうなと思えて来ました。 |
注文主も美的センスを持った人物で、信頼関係もあったから出来たペンなのだと思います。 そうでなければこれほど素晴らしいペンは作れない筈です。 |
均一に模様を彫るのではなく、自然の造形を意識して作っていることが伝わって来る仕事です。それは一流の職人は芸術家でもある証です。 |
腕の良い職人はいても、芸術家のように独創的なデザインの物を作ることが出来る職人はまずいないものなのです。 |
作者は実際の小枝を手に取って良く観察したうで作っているのに違いありません。 |
小さな切り株のような部分の上部にまで模様が彫られています。 |
左の切り株のような部分の彫金に、作者がどれだけこだわりを持って作ったかが分かるというものです。 |
このペンの金細工は360度どの角度で見ても美しく、その完璧な彫金は絶賛に値するものです。 |
200年ぐらいは経った布らしい経年変化が感じられるケースです。 |
このような独創的なデザインで超難度の技術が必要な作品を作るには、試作を繰り返し作らなければならないので、最短でも1年〜2年は掛かっているでしょう。 ルネサンス Gen Katagiri |