ルネサンス エナメル ロケットペンダント アンティークジュエリー

No.7
ルネサンス様式エナメル
ハート型ロケットペンダント
両面エナメル(内部はブルーエナメル)
オランダ、ドイツ又はイギリス
1640年〜1660年頃
1,4cm×1,2cm(バチカンを除く)
Sold

【画像A】
この花のエナメルのタイプは多くあり、年代が特定されていて、オランダ、ドイツ、イギリスで流行したことがわかっています。

1680〜90年頃には、流行も下火になって、仕事が正確でなくなり、花の端などが、にじんでいます。

ルネサンス様式のエナメルは、白を基調としているのが特徴で、一見、瀬戸物のようにも見える独特の質感があり、それが18世紀以降のエナメルとの違いです。

拡大してよく見ると、花びら一枚一枚が白く縁取りしてあり、縁取りの中はグラデーションをかけたエナメルですが、1円玉より小さな物であることを考えると、これは凄い仕事なのです!

左右の花は形を違えて描いてあるのも良いですね。
中央部の左右に描かれた青い花は僅かに盛り上がったぼかしをかけた美しいエナメルです!

こんなに小さなペンダントで、しかも表裏の両面に、これだけ多彩な色でエナメルの細密画を描いてある作品は、18世紀以降のエナメル・ジュエリーではあり得ないことです。
これはルネサンス様式のエナメルならではのことなのです。



【画像B】
花びらの縁の色が違いますし、中央部の花心にも違いがあります。そして花心のぼかしをかけた描き方も秀逸です。

このハートのロケットペンダントは、表裏ともに同じレベルのエナメルを施してありますが、これがルネサンス様式のエナメルの特徴です。
ルネサンス期の指輪では、ベゼル(フェイス)の裏にエナメルで模様を描いてある物もあるほどです。

ルネサンス様式のエナメルは、歴史上最もハイレベルの作品が作られていますが、それには理由があるのです。

まだダイヤモンドをカットすることが出来なかったので、ダイヤモンドの粉末を使った宝石カッターも無く、サファイヤやルビーなどのカラーストーンも面を取ったファセットカット出来なく、丸く削るカボッションにするしか出来なかったのです。

だからジュエリーの主役は宝石ではなく、エナメルが宝石に代わる主役だったのです!!

こんなに小さなペンダントでも、表裏ともにこれだけ美しいエナメルで絵を描いてある物は、ルネサンス様式のジュエリーだけなのです。この前の時代も、この後の時代にも存在しないのです!

ルネサンス期はジュエリーがアートして高く評価された時代で、建築家もジュエリーの建築の勉強の一環としてジュエリーの製作の勉強をしたと言われているのです。

それだけにルネサンス期のエナメルを使ったジュエリーは、高価な宝石を使ったジュエリーに勝るとも劣らない希少価値と魅力があるのです!!

このロケットペンダントが作られた1640年〜1660年頃は、絵画や彫刻の分野ではバロック美術と言われる作品が作られていますが、エナメルのジュエリーでは、まだルネサンス様式の物が作られていたのです。

エナメルのジュエリーは傷が付きやすいですし、当時作られた数も少ないので、約400年から500年も経った今では、良い状態で残っている物は本当に少ないのです!!

このルネサンス様式の小さなエナメルのペンダントは、それがどんな物なのかが分からないと何故こんなに高いのか不思議に思われるでしょうが、これは立派なミュージアムピースなのです!!

ルネサンス様式のエナメルジュエリーは、普通ならミュージアムでしか見ることが出来ないような極めて希少価値の高い物なのです!!

だから、100万円を切る価格で、これほど魅力のあるルネサンス様式のエナメルのロケットペンダントを入手出来るなんてことは、普通はあり得ないことなのです!!

実物大
1円玉サイズ ←実物大
ブラウザによって大きさが違いますが、1円玉(直径2cm)を置いてみれば実物との大小の比率が分かります。
ルネサンス エナメル ロケットペンダント アンティークジュエリー
1円玉サイズ ←実物大
ブラウザによって大きさが違いますが、1円玉(直径2cm)を置いてみれば実物との大小の比率が分かります。
ルネサンス エナメル ロケットペンダント アンティークジュエリー 側面
立体感のある綺麗なハート型に作られています。
ルネサンス エナメル ロケットペンダント アンティークジュエリー 痩躯面2
ルネサンス エナメル ロケットペンダント アンティークジュエリー
ルネサンス エナメル ペンダント 上部 内部
上下の金具の部分が黒くなっているのは、パティナと言って、ゴミなどが石のように固くなったものです。これは古い年代のジュエリーの証です。
内部はブルーのエナメルです。1680年以降は内部が白いエナメルになります。


このような小さなロケットペンダントは、当時は単独で使った物ではなく、何らかのジュエリーに下げて使った物だと考えられます。

1円玉サイズ ←実物大
ブラウザによって大きさが違いますが、1円玉(直径2cm)を置いてみれば実物との大小の比率が分かります。


《ルネサンス様式エナメルの技法》 

特に記述がない場合は、すべてヴィクトリア&アルバート美術館所蔵です。

フランスの Toutin家が従来は黒地や青黒地に施していたエナメル細密画を白地に鮮やかに施す技法を1630年頃に開発しました。

その手法は肖像画だけでなく、色とりどりの花を描くのに適していたので、時計ケースや文字盤、その他のエナメルが描ける小物に施され、宝石の裏にも美しいエナメルの花が描かれています。

エナメル ロケットエナメル ロケットエナメル ロケット

1630-40年頃 フランス ブロワ
高さ: 6.59 cm, 幅: 4.24 cm 蓋の内側にも細密画が描かれており、もう一方はブルーエナメル。

エナメル画家の多くは金細工師としても訓練を受けていました。そして、この二つの技術は密接に関係していたのです。

フランスの中心地である、ブロワ、シャトーダン、そして、パリでは、時計、ジュエリー、その他の小さな金銀製品に寓意的な肖像画がエナメルで装飾されています。

このロケットでは、擬人化された「秋」と「冬」が前面に「春」と「夏」が裏に描かれています。これはブロワかパリで作られた物と推測することができます。17世紀には、極小の油絵のような繊細な肖像を描くことを可能にしたエナメル画の新技術が現れました。

これらのエナメルの細密な肖像画はヨーロッパ大陸ではじめに流行し、イギリスでは特に1720-1760年代に流行しました。

エナメル画は細かく挽いたガラスを加熱して作成しますが、着色は金属の酸化物を地金の上に置いて行います。

色付けは何回もの段階を経る必要があり、それぞれの色によって必要な温度が異なるので、エナメル肖像画を成功させるためには温度の非常に正確なコントロールが必要です。なぜなら、焼成のたびに、ひび割れや気泡が入る危険があるからです。


バロック時代の絵画の表現手法

本当に絵の一部がはがれているかのようにリアルな表現がされています。

だまし絵

ヘイブレヒツ 静物ートロンプルイユ 1663年

蔵:カリカッソンヌ美術館
(兵庫美術館 だまし絵展より ※終了)

ルネサンス エナメル ロケットペンダント アンティークジュエリー
ルネサンス エナメル ロケットペンダント アンティークジュエリー 側面

(※青でマークした線は合成です)

花の内部には陰影をつけてあり、幾重にもハッキリした曲線(※)を描くことによって、立体感を感じさせています。

それを曲面に施しているところが、大変興味深いところです。

二次元のエナメル画を立体的に見せる表現です。

エナメル ブックカバー

1670年頃 いとも豪華なブックカバー

高さ: 97 mm, 幅: 76 mm, 厚み: 47 mm

17世紀中頃、装飾物の模様として花を描くことが流行しました。

この様式は記録にも残っていて、1663年、ジル・レガレによる金細工の本やそれに続いた一連の出版物にこのスタイルが記述されていました。

デザイン本では花は自然な形で描かれているのですが、この装丁の表裏の花はシンメトリックに配置されています。また、葉のついた枝も整然と配置されています。

このエナメル装飾にはインパクトはあるのですが、仕事のレベルが最高というわけではなく、近くで見ると白いエナメルには気泡が入っていることがわかります。 パリの宮廷のために作られた物のような洗練に欠けていて、色も薄くなっています。

このタイプのエナメル画は、1630年に開発されるとヨーロッパ中に広がりました。

この本のカバーはフランス、オランダ、もしくは、アウグスブルグのようなドイツの中心地のいずれかで作成された可能性があります。

 

エナメル  ボウ エナメル 裏

1660年頃 イタリア バジリカータ
高さ: 4.6 cm

宝石の裏にカラフルなエナメル画を施しています。表のエナメルは白と黒のみです。

エナメル  ボウ エナメル 裏

1660年頃 イタリア バジリカータ
高さ: 3.7 cm, 幅: 2.7 cm, 厚み: 0.3 cm 

やや斜めを向いた女性の半身を見事に表現しています。裏は平らで色彩豊かに花が描かれています。
本体は金でできています。

エナメル  ボウ エナメル 裏

1630-1660頃 西ヨーロッパ
高さ: 4.7 cm, 幅: 2.9 cm, 厚み: 1.3 cm

宝石のついている表側のリボンの輪から、「裏」のカラフルなエナメル画がのぞいている。

エナメル 

ボウ エナメル 裏

1650年頃 西ヨーロッパ
高さ: 4.6 cm, 幅: 3.3 cm, 厚み: 1.2 cm

ご紹介中のハート・ロケットと同じ種類の花が描かれています。
「金細工師の王」ジル・レガーレの著作で発表されて人気になったスタイルです。

 

スライド

1680年頃から、色が滲むなど物によってエナメル画のレベルが低下してきます。

1685年にルイ14世がナントの勅令を廃し、信教の自由が制限されたので、手工業を担っていたユグノー教徒の多くが国外へ逃れましたが、そのことが関係していると思われます。

スイスやイギリスなどでは、逆に、職人が入ってきて恩恵を受けました。

ちなみに、あの「天才」ピーター・カール・ファベルジェを出したロシアのファベルジェ家もユグノー教徒でした。

 

1690年頃 イギリス

「スライド」の裏
高さ: 2.2 cm, 幅: 2.4 cm, 厚み: 1 cm

 



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