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マーキュリー、哀れみの心をおこしてララを地獄の門より引き上げる。 オウィディウス 『祭暦』 このインタリオは半透明なカルセドニーなので、裏から光りを当てて見るとその美しさに感激されると思います! |
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新古典主義インタリオ 18世紀末〜19世紀初期(フレームは1870年代) ポニャトフスキー・コレクション |
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彫りと石のクオリティが抜群に高いインタリオ(宝石彫刻)で、彫られているのも古代ローマのあまり知られていない神話でオリジナリティがあります。 このインタリオはポーランドの名門貴族ポニャトフスキー家の王子スタニスワフのコレクションの一部でした。 コレクションは 2600 ものハイ・クオリティなインタリオと若干のカメオで構成されていましたが、その中でもこの「マーキュリーとララ」の出来映えは、トップクラスと言って良いと思います。 ポニャトフスキー・ジェム(gem、インタリオのこと)の魅力は、その美しさと彫りの卓越性に加えてオリジナリティです。 他の分野の美術品(例えば、絵画、彫刻、銅版画など)から構図を拝借した物は一つもなく、全て古代の神話や物語から新しくイメージを描き出しています。 それらは現在では価値のある芸術作品として認められており、研究の対象になっています。 このインタリオ 「マーキュリーとララ」は、彫りも素晴らしいのですが、フレームも1870年代の最高水準のエナメルを施したフレームが付いています。 18世紀後期から19世紀初期の優れたインタリオやカメオは最低でも150万円〜200万円は することを考えると、このインタリオの価格は、半額以下なのです!! |
この「マーキュリーとララ」のインタリオを型にして19世紀に作られた石膏のインプレッション(写し)。 ドラマチックな構図の細部まで精密に写し出されている。 |
模様の変化に富んだ美しいカルセドニーを使っています。 高い技術の彫りと完璧な仕上げが施してあり、人体の滑らかさを感じます。 |
ポニャトフスキー・コレクションの特徴とされるポニャトフスキー・ジェムの特徴を備えています。それらは、インタリオが大きく、ギリシア文字のサインが入っていること、斜めが強調された構図、比較的知られていない神話、などです。 斜めの構図とは、マーキュリーとララが伸ばした足や、それに対応するかのように斜めになっている「カドケウスの杖」やマントのことです。これは、古代の表現を真似たものだと思いますが、ララをふっくらとした官能的な姿で表現するなど彫りに近代的な正確さを持っているので、なかなか面白い感じがします。 左の岩は冥界へと通じる門で、下から三つの頭を持つ、地獄の番犬「ケルベロス」が頭を出しています。ケルベロスの尾は三つに分かれた蛇になっていて、それが上方の岩の間から出ています。 地平線は強く彫ってあり、その下にギリシア文字のサインがあります。 |
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この画像の色が実物に近い色です。 |
左の岩は冥界へと通じる門で、下から三つの頭を持つ、地獄の番犬「ケルベロス」が頭を出しています。ケルベロスの尾は三つに分かれた蛇になっていて、それが上方の岩の間から出ています。 |
マーキュリーは旅行帽「ペタソス」を頭に被っています。 ララをふっくらとした官能的な姿で表現し、マーキュリーの腹部や足は男性らしい肉体美を表現しています。 まるでダンスを踊っているようなリズミカルな構図が素晴らしい! |
足の指の表現が何とも素晴らしい!! マーキュリーの足には空を飛ぶことができる翼が彫られています。 |
風になびいたマーキュリーのマントのラインは実に美しい物で、その先端を持つララの手、その下になびくマントの先端の軽やかなイメージが実感出来る素晴らしい表現です。 |
マーキュリーが神々の伝令の証である杖「ケーリュケイオン」の彫りも素晴らしい。 【参考】 インタリオについては《知られざるアンティークジュエリーの魅力》の【インタリオ】でご覧ください。 |
赤いボール状のエナメルは直径2mmほどの小さな物です。 |
『驚異のエナメルワーク!!』 僕は約40年もアンティークジュエリーの仕事をしていますが、こんなボール状のエナメルは見たことも聞いたこともありません!! まるで金箔が入っている赤い琥珀のようなファンタジックな美しさがあるのです!! エナメルだけでボール状の物にするなどということは出来る訳がないので、いったいどうやって作っているのだろうと、よく見たら、これは小さなミラーボールのように表面をカットした粒金に半透明の赤いエナメルを被せてあるのだと分かりました!! ミラーボールのように表面をカットした粒金が、ギロッシュエナメルの地模様の効果を発揮して、このように見えているのですから驚きです!! 赤いボール状の下の水色のエナメルに濃いブルーのドットが入ったエナメルも難しいエナメルでジュリアーノスタイルのエナメルです。 フレームのエナメルの部分は幅が狭く余り目立ちませんが、素晴らしいインタリオの名脇役としては充分です。 高度な技術と手間をかけてこれほど素晴らしいフレームを付けたのは、インタリオの持ち主がこの作品の美術的価値を大いに理解していたに違いないのです!! 【参考】 エナメルについては《知られざるアンティークジュエリーの魅力》の【エナメル】でご覧ください。 |
エナメルを主体にしたジュエリーの場合、もっと派手な色使いになっていることが多いのですが、その点、色使いが控えめなのが、フレームとしては良いところです。 |
フレームを拡大すると、三つ葉の透かしが入っています。これはゴシック教会の窓の形です。 ルースは新古典主義、エナメルはネオ・ルネサンス、透かし細工はネオ・ゴシックの様式があり、ヴィクトリア時代の折衷主義的な傾向を示しています。 折衷主義とは必ずしも悪い意味ではなく、複数の取り合わせの妙は、同時代の教会建築やインテリアに見る事ができます。 |
【参考】
ポニャトフスキー・スキャンダル スタニスワフ・ポニャトフスキー公(王子)は、ポーランドの名門貴族のポニャトフスキー家の出でポーランド・リトアニア共和国の近衛隊長、大蔵大臣、ストルイの領主までつとめ、王位継承者として、政治経済に加えて美術の教育も受けていました。同名の叔父はポーランド・リトアニア共和国の最後の王でアウグスト2世スタニスワフです。 ポーランド分割によって、政治の世界から身を退いたスタニスワフ・ポニャトフスキー公(王子)は、1791年からイタリアに定住します。 それ以来、王子は「古代の宝石」を収集し、2600ものインタリオとカメオのコレクションを築き上げました。(うち、カメオは20個程)。 王子は「古代の宝石」としてカタログを出版したので、コレクションの存在自体は大変有名でしたが、誰も実見は許されませんでした。 カタログの著者は不明でしたが、おそらくは王子本人であったと言われています。 王子の死後、遺族によってコレクションはオークションに掛けられますが、「どうも近代に入ってから作られた物らしい」との噂がたちます。 それも無理無からぬことではありました。2600個のうち、1700程にギリシア語で作家名が入っていたからです。本物の古代のインタリオで、しかもサインが入った物となると非常に貴重で、所在が知られていないような物はほとんどなく、1000を超えるような数の古代のサイン入りのインタリオが突如コレクションされるということは、かなり考えにくいことでした。 オークションの結果は惨憺たるものでしたが、落札したジョン・ティレルという人は、本物の古代のインタリオだと信じていたようで、石膏で型を取って、カタログと一緒に出版しました。(資料番号の T はティレル氏の頭文字でいまでもそうなっています。) ところが、多くの識者から「モダンだ」という反論を受け、新聞で激怒したティレル氏と学者との論争が取り上げられ、さらにその後、スタニスワフ・ポニャトフスキー公ともあろう方が、古代のインタリオの贋作を作らせたのではないか、と取り沙汰され宝石彫刻の分野では大変な騒動になりました。そんな中でコレクションは散逸してしまいました。 これが所謂、「ポニャトフスキー・スキャンダル」です。 現在では、かつてのポニャトフスキー・コレクションは再評価が進みつつあります。と、言うのも、1830年代には「モダン」つまり近代だと思われていましたが、現在ではもう200年以上も経っており、それよりも重要なのが、ポニャトフスキー王子が旧領地からの莫大な収入で、当時の一流の宝石彫刻師にインタリオの作成を依頼していたことです。その制作費は今の貨幣価値に換算すれば数十億円にもなると思われるのです。 少なくとも、ピクラー一族やカランドレッリといった有名作家が一部の作品を作っていたことが解っています。
サインはギリシア文字で、ディオスクリデスやアポロニウスなどの古代の超有名な彫刻師や架空の名前が彫り込まれています。 先程も述べましたが、ポニャトフスキー・コレクションは、当時の一流作家の作品で、美術的価値や独創性、歴史の面白さから評価が高く、各地の美術館に所蔵されていますが、まだ一般の認知度はそれほど高くないのが実情です。 僕もポニャトフスキー・コレクションは、話には聞いていましたが実物を扱ったのは今回初めてです。
王子は生前、コレクションのインプレッション(石膏でとった写し)を手ずからベルリン博物館の古代セクションの室長(のちに副館長)のアーネスト・ハインリッヒ・トールキンに見せたことがありました。彼は、
と、感嘆しました。しかし、トールキンは次の如く言葉を続けたのです。
彼は真贋を見抜いただけでなく、その価値をも認めていたのです。 |
インタリオに彫られている神話 ララは美しく、おしゃべりな水辺のニンフでした。 仲間のニンフであるユートゥルナとゼウスとの情事は秘密でしたが、ララは黙っていることができずに、ヘラに告げ口します。 信頼を裏切られたゼウスは怒ってララの舌を抜いて、冥界の門に連れて行くようにマーキュリーに命じます。 ところが、いつも忠実なマーキュリーが珍しく任務の途中でララに恋をしてします。マーキュリーはララを地獄から助け出すと、彼女をゼウスに見つからないように森の中の小屋にかくまいました。 マーキュリーとララの間にラーレースという家庭を守る神が生まれした。 |
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