カクテルグラスに付いた水滴の微粒子ほど美しい物はありません。

でも見る見るうちに水滴が大きくなり、無残な姿になる儚き美しさなのです。

そんな瞬間の美を永遠に続く美に変えたのがフロステッド加工を施したジュエリーなのです！

だからフロステッド加工を施したジュエリーは、アールデコ・ジュエリーのシンボルなのです！！

しかもこのブローチはガラスではなくクリスタル（水晶）を使ったミュージアムピースと言える貴重な作品です！！

1870年頃に製氷機が発明され、氷を入れた冷たい飲み物が作られるようになるのですが、アメリカで「永遠の繁栄」と言われた1910年代の好況期にニューヨークには数万のバーが営業していて、カクテルが大人気だったのです（マティーニやマンハッタンなどのカクテルはこの時代に作られた）。

カクテルはシェーカーに氷を入れて、複数の種類のお酒を混ぜて作るとても冷たいお酒です。だからカクテルグラスの外側に水滴の微粒子がびっしりと付くのですが、それは何とも美しい曇りガラスのようで、そこに手を触れたくなくなるほどです。

でもその美しい水滴の微粒子は、見る見るうちに水滴の粒が大きくなり、美しくなくなって行くのです。僕はフロステッド加工を最初に行った人は、きっとカクテルが好きな感性豊かな人で、永遠に美しさを保つ水滴の微粒子のような美しい曇りガラスを作ろうと思ったのに違いないと思っています！！

永遠に美しい、水滴の微粒子のようなフロステッドクリスタルは、水面の波紋のようにカットされ、フレームにセットされた最上質のオールドヨーロピアンカット・ダイヤモンドとのコラボレーションは、この時代を象徴する美なのです！！

透明なロッククリスタル（水晶）の表面を奇麗に荒らして研磨しているのでしょうが、ゴールドの艶消しと同じで、もの凄く難しく手間の掛かる技法なのです！！

フロステッド加工を施したジュエリーは、通常はガラスを加工しているのですが、これは何と贅沢にもロッククリスタル（水晶）をフロステッド加工しているのです！！！

ガラスを加工したフロステッドグラスのジュエリーでもとても少ない物なのに、ましてや水面の波紋のようにカットされたクリスタル（水晶）をフロステッド加工した物は、これしか見たことがありません！！

クリスタル（水晶）を波紋のようにカットするのは、きちんとした幾何学的な模様をカットすのとは違った難しさがあるのです！！

機械を使わずに手でカットしたあと、凸凹の面を研磨してフロステッド加工しなければならないので、フラットな物よりも何倍も手間が掛かるのです！

でもそれによって、服の色や光のあたり方で魅力的な変化を楽しめるのです！！♪

フロステッド加工のジュエリーは、当時も美的感覚の優れた人たちにしかその魅力は理解出来なかったからなので、作られた数はとても少なかったのです。

今の欧米の人たちにもその美しさは分からないのですが、日本人にはその美しさは理解出来る人たちが、比較的多いのは嬉しいことですね。

僕は昔からフロステッドグラスを使ったジュエリーは、アールデコの代表的な作品だと高く評価していますので、僕の昔からの常連のお客様は、素晴らしいフロステッドグラスのジュエリーを持っていらっしゃるのです。


何となく和の雰囲気があるとても魅力的なデザインは、ジャポニスムの影響を受けているせいかも知れません。

帯留めに使ったら素敵です！♪


フロステッドグラスは半透明なので、服の色によってイメージが違う楽しさがあると思います♪


僕は覚えているだけで100回はロンドンやパリに買い付けに行きましたが、フロステッドグラスを使ったジュエリーは、滅多に出会う物ではありません！

ましてやガラスではなく、水晶を使った物は超レアな貴重な作品なのです！！

今はフロストグラスとかの名前で安物のガラス器がありますが、あれはサンドブラストという簡単な技法で、ガラスにコンプレッサーで砂を吹き付けて表面を荒らしただけの物です。
美しくも何でもないのです（笑）。だからそんなつまらない物とは間違ってもいっしょにしないでくださいね。

単なる曇りガラスは昔からありましたが、あれは水が付くと変化するし、決して奇麗なガラスではありません。

だからフロステッドグラスは曇りガラスとは似て非なる物なのです。