中世鐙型 サファイヤリング 指輪中世鐙型 サファイヤリング 指輪中世鐙型 サファイヤリング 指輪
中世鐙型 サファイヤリング 指輪





 皆さんは絶大な権力を持った裕福な司教の指輪にしては、何故サファイヤがこんなに小さな石なのかと不思議に思ってらっしゃるのではないでしょうか?

 この指輪が作られた12世紀から13世紀頃は、まだ大航海時代の前で、サファイヤはスリランカで採れた石がシルクロードを経てヨーロッパに入って来たのです。鉱山の採掘技術も未発達でしたからサファイヤの絶対量も少なく、このような小さな石でも貴重な物だったのです。
 形も歪なのはそのせいです。

 カットも綺麗な面を取ったファセットカットではなく、丸く削っただけの簡単なカットですが、まだダイヤモンドをカットすることが出来なかった時代には、ダイヤモンドを使った、石をカットする為のカッターすら無かった時代だからです。

 サファイヤのカットは原始的な物ですが、指輪の作りは洗練されたモダンなイメージだけにそのアンバランスさがとても面白いと思います。これは偶然の産物でしょうが、これが中世鐙型指輪の最大の魅力だと思います!♪

 石の留め方は、穴を掘ってそこに石を入れて周りを伏せて留めているのですが、1000年近くもの時間がたってもちゃんと留まっているのですらたいしたものです!

 サファイヤの下の部分の厚みのある部分も金無垢で、手に持った時に心地よい重さを感じますし、内側に近い部分は緩やかなアールをつけてあり、それが唯シンプルなだけではなく、美しい形に見えるポイントになっているのです!

 それにしても今から1000年も前(日本なら平安時代)に、これほどシンプルモダンなデザインの指輪が作られていたのは本当に不思議です!

 15世紀〜16世紀のルネサンスの指輪は、装飾性の強いデザインになっているのに、それより約400年も古い中世の指輪が、ずっとモダンなデザインなのには何か訳がある筈です。
 
 この時代のサファイヤは、良心、神聖な瞑想、希望、純粋さを表すとされて、とても人気があった石ですが、キリスト教が絶大な力を持っていた時代だけに、聖職者が付ける指輪には精神性が求められたせいかも知れないなと思っています。

 聖なる石を高く持ち上げた指輪、それは天に少しでも近づこうとした、あのゴシック建築の教会の尖塔と同じ意味なのではないかと思います。鐙型というデザインは当時とても人気があったデザインで中世の指輪を代表する物なのです!

 洋の東西や時代を問わず、優れた物ほどシンプルでモダンなデザインの物があるのです。
 日本の室町時代頃の刀匠が作った鐔の、余分な装飾を一切省いたシンプルで美しい透かしなどにもこの鐙型サファイヤリングと共通する美を感じます。

 シンプルなデザインの物ほど、真に美しいと感じられる物を作るのは難しいのです。
 ほんの僅かな違いでまるで違う物になってしまいますし、ごまかしが利きませんからね。
 アンティークの指輪でも石が良いだけで、作りは良くても、シンプルなだけの面白みに欠ける指輪が多いですが、現代の指輪はハリーウインストンのような石の価値だけの指輪か、何ら意味の無い無駄な装飾の指輪が氾濫しているのです。

中世鐙型 サファイヤリング 指輪
中世鐙型 サファイヤリング 指輪
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