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ルネッサンス インタリオ
「ポセイドン&アンピトリテ」
アゲート
イタリア 1500年前後
サイズ 2,2cm×2.6cm


僕は前回の買い付けのカメオとの出会いで、ルネッサンスのカメオの魅力に取り付かれてしまいましたが、今回はこの「ポセイドン&アンピトリテ」のインタリオに出会い、もともとインタリオが好きだっただけに 本当に心躍るものがありました。カメオの浮き彫りと違って、インタリオは沈み彫りですから見た目にはその彫りの凄さが解りにくいものなのです。しかし、現代の私たちには写真という強い味方がいます!
不思議な事に拡大写真ではインタリオがカメオに見えるのです!!
この「ポセイドン&アンピトリテ」のインタリオもカメオに見えているからこそ、その彫りの素晴らしさが解るのです。
僕が使っている1600万画素のスキャナータイプのカメラではどうやってもインタリオがカメオになってしまうのですが、300万画素の小型デジカメでは照明によってはインタリオがそのままインタリオとして写る時があります。
この画像がそうです。左がカメオに見えて右はインタリオに見えるでしょう?
紀元以前の古いインタリオは、本来、印章として粘土板に押して使う実用品として作られた物ですが、ある時期(おそらく古代ギリシャ)から美術品として作られるようになったのだと思うのです。 只、凹凸を逆に彫ってあるだけに粘土や蝋をたらした物に押さない限り、その彫りの美しさを鑑賞する事は出来ません。それ故、インタリオはカメオのように大きな物が無いのだと思います。
では何故、カメオよりずっと難しい思いをしてインタリオは作られて来たのでしょうか?
その事に付いて書いてある本も見たことがありませんから、まだ研究されていないでしょう。

これは僕の単なる推測ですが、一見、見ても解らないだけに、粘土に押して浮き彫りにした時、初めてその彫りの素晴らしさが解る驚きに魅力を感じたのではないかと思うのです。
もうちょっと解りやすい例で言えば、初めてマイクロ彫刻画を見た時に、初めはその驚異的な繊細な彫りが解らなくても、ルーペで拡大した時に初めてその凄さに気づくようなものだと思うのです。マイクロ彫刻画も小さな実物を見ないで拡大画像だけを見ているとその彫りの凄さは解らないものなのです。

人間が衣食住が足りて心にゆとりを持てるようになった時に、芸術という概念が出来たような気がするのです。
だから僕はカメオより、インタリオに高い芸術性を感じるのです。

この「ポセイドン&アンピトリテ」のインタリオは、ルネッサンスならではの芸術性の高い優れた作品です!古代ギリシャ、ローマ時代に隆盛を誇ったカメオとインタリオは、他の芸術がそうであるように、中世に入ると宗教に束縛された作風に変わってゆき廃れてゆくのですが、ルネッサンスの時代になると、宗教の呪縛から解放された自由な発想の躍動感溢れる素晴らしい作品が作られるようになるのです。

この海馬の力感に溢れた美しい彫りをご覧になって頂ければお解りになって頂けると思います。そして
実際の大きさ(頭部の長さは僅か5mm)を考えると、人間の仕事と思えない驚異的な仕事で、それは正に神の技と思える程なのです!!
それは実物を見ないことには実感が湧かないかも知れません。
この時代のカメオもそうですが、下部の波の部分に、天然のままの美しい石の持ち味を生かそうとした作者の感性の素晴らしさが伝わって来るではありませんか。
今、気が付いたのですが、カメオよりインタリオの方が小さな石により細密な彫りが出来るので、これだけの複雑なモチーフを彫る事が出来たのではないかと思えてきました。
ポセイドンの頭部は僅か2mmしかないのにこれだけの表現をしていますし、海馬の左下にももう一人のエロス(キューピット)まで彫られているのが素晴らしいと思います。

今から500年も前に作られた作品が、これほど良い状態で残っていること自体、稀なことですし、増してやこれだけの優れたルネッサンス期のインタリオを皆さんにお届け出来るのは嬉しい限りです。

マイクロ彫刻画もそうですが、今では絵画や彫刻に比べて同時代のインタリオの美術的評価が余りにも低いのは不思議でなりません。
僕はこれからは、こういう知られざる古い時代の芸術品を中心に扱ってゆきたいと思っています。

<インタリオの図柄>
黄金のたてがみを持ち、青銅のひづめを持つ海馬に乗る、向かって左の男性は、 ギリシャ神話の中のオリンポス十二神の一人、海の神<ポセイドン>です。 エロス(キューピット)に恋の矢を放たれたポセイドンは、ティタン族の美しい 娘<アンビトリテ>に恋をしました。 左上の海にはエロスがポセイドンの象徴である三つ又の槍(矛)を持っており、 海馬に乗っているのがポセイドンであることを示しています。 右側の腕輪をした美しい女性は、アンビトリテ。 彼女は、海の猛々しい武者のポセイドンに最初は恐れをなしていましたが、彼の 贈り物の一つであるイルカが、彼の恋心を彼女に伝え、イルカのかわいらしさと 彼の誠実な心を感じたアンビトリテは、ポセイドンと結婚することにしました。 その物語がこのインタリオの図柄となっています。

《参考》
古代ギリシャの金の海馬(ルーブル美術館蔵)

ギリシャ神話





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