エセックス・クリスタル(リバースインタリオ) 「梟」 フランス 1860年頃 ロッククリスタル(水晶)、マザーオブパール、18K 直径2,8cm 厚さ0,6cm(本体のみ) Sold エセックス・クリスタルは、アンティークジュエリーの中でもとても面白みのある物ですが、カメオなどに比べてどんな技法で作られているのか以外に知られていないですね。 これを初めて見る人は、一見夜店で売っているようなプラスチックの中に何かが入っている物をイメージすようですが、それは大いなる勘違いというものです。 これは立体ガラス絵とも言うべき物で、まるでカメオが中に入っているように見えるのは、水晶の裏からインタリオ(沈め彫り)を彫り、彩色しているからです! これは実は大変高度なな技術と手間が掛かる仕事ですし、見た目には分かりにくいので、カメオのようにブームにならなかったし、20世紀初頭で完全に廃れてしまった技術です。 まず透明な水晶の裏にカメオとは逆に立体的にモチーフを彫ること自体がどんなに難しいことかを理解出来ないと、エセックス・クリスタルの魅力は理解出来ません! 透明な水晶にカメオのような彫りを陰刻するには、彫りを目で見て確認しながら彫れる訳ではないのです! インタリオがそうであるように、3D画像が頭に浮かぶ人間でなければ出来ない技術なのです。 現代でも優秀な建築家の中には、頭に浮かんだ3Dの図面をグリグリ回してどの角度からも見られる人がいることが、最近は分かっています。 彫るだけでも非常に難易度の高いことなのに、さらに彫った部分を磨くのですがこれがまたとても手間の掛かる仕事です。 最後に彩色するのですが、これは言わば細密画のガラス絵と言えるもので、普通の絵とは逆にガラス絵のように手前から奥に描いてゆくのです! この梟の作品は、下にマザーオブパールを置いてあるので、まるで銀屏風に書いて日本画のような雰囲気です! フレームがシンプルモダンななのも素晴らしい! ガラス絵は描いて額に入れれば、絵の部分が空気に触れにくいので、長い年月退色しないのが特徴ですが、エセックス・クリスタルも同じで絵画のように退色することはなく、数百年の時を経ても描かれた当時のままの状態を保たれるのです。 この梟の作品は、サインはありませんが、19世紀中期の実力ナンバーワンと評されていた作家の作品です。 エセックス・クリスタルには超細密な彫りで評価されている物もありますが、この梟の作品は技術的なものよりも、日本がの影響を受けたと思われる絵画的な表現が特徴であり魅力です!! 猛禽類の特徴である鋭い目と足と爪の表現はこの作者の類い希な才能が良く出ていると思います。 見た目には、分かりにくいですが真横からの画像を見ると水晶の厚みの限界まで深く彫ってあるのが分かります! だからこれだけ立体感を感じる見事な作品になっているのです。 真横からの画像で右側の目がはっきり見えますし、胴体も右側もはっきり見えるのは完全に立体的に彫られている証なのです!! つまりエセックス・クリスタルとは、インタリオと細密画のガラス絵、彫刻と絵画の両方の魅力を備えた魅力溢れるアートなのです! エセックス・クリスタルがどんな技法か、それを作ることがどれほど大変なことなのかが理解出来るとこれほど面白いアンティークジュエリーはないと思えて来るのです!! そしてカメオや高価な石を使ったジュエリーに比べて、その価格が如何にお安い物なのかが理解出来るのです!! 世の中、数が沢山あっても人気があって分かりやすい物の方が価格は高くなるものなのです! エセックス・クリスタルのように一見解りにくい物はその内容から言って格段に安いんですよ。 だから僕は積極的にエセックス・クリスタルは扱って行きたいと思いますし、皆さんにもその魅力をぜひ分かって頂きたいと思っています。インタリオの インタリオの詳しい説明は《知られざるインタリオ》でご覧下さい。
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