皆さんはこの格子状の透かしをどうやって作ったのかお解りになるでしょうか? これは何とプラチナの厚い板を糸鋸で挽いてヤスリで丹念に仕上げているのです!! それは裏の画像を見て頂ければ明らかですが、これがどれほど大変なことかは少しでも彫金の経験がある人なら解ることだと思います。そして実はもっと大変な事は糸鋸で挽いた後、ヤスリで綺麗に仕上げることなんです。表面からは格子状の線が0,1mmもない極細の線に見えますが、裏側を見ると糸鋸で挽いたあとで、ヤスリでものすごい神経と時間をかけて細い綺麗な線に見えるように仕上げてあることが解ります!! 繊細に見えながらも80年も使用に耐える強度と耐久力があるのも納得出来ますね。今ならワックスを使って型を作り鋳造すれば簡単に繊細な透かしは出来るでしょうが、強度と耐久力の問題があるから、このようなジュエリーは作れないのだと思います。 僕は田舎(米沢)で伝統的工芸家具の企画制作にも携わっていた頃、金具職人ともよく話をしたのですが、鉄板に透かしを入れるのは鏨(タガネ)で切ることよりも狭い穴をヤスリで面を取って仕上げることの方がずっと難しいのだということ知りました。繊細な透かしほど、細いヤスリを使う訳ですが、それがよく折れてしまうらしく、そのたびにリズムを崩して仕事がはかどらないというのです。(彼はNHKで全国に紹介された素晴らしい職人で、僕は仕事の話しを聞くのが大好きでした) 箪笥の大きな金具でさえ難しいと言うのに、この透かしは菱形の空間の一辺がたった1mmぐらいですから、その難しさは空前絶後です!! おそらくこの仕事の為に特別に作った細くても丈夫な特殊なヤスリで仕上げているのでしょうが、それは想像を絶する難しい仕事だと思います。 実際に作っているところを見たかった! いや〜しかし、これは新発見ですね。こういう事を知ると現代のジュエリーなんてどんな高級ブランドの高価な物でも玩具みたいな物ですよ!! 透かしの周囲とセンターのアクアマリンを囲む飾り鎖は、一つおきに花のつぼみの形に作ってあるのが良いですし、ミルグレーン(ギザギザ)を丹念に打っているのが素晴らしい!!♪ そしてチェーンは一見こんなに細くて大丈夫なのかと思うほど繊細ですが、一つ一つの輪を作って丹念に蝋付してありますからこそ、今でも使用に充分耐える耐久力があるのです。現代の低価格の細いチェーンはぶつぶつ切れてしかも修理不能ですからどうしようもないですからね。 この拡大画像でその精緻な仕事が良く解るのですが、 今度は繊細なイメージが伝わらないのが残念です。これはPCのディスプレーの性能がもっともっと向上しないことには解決不可能なんです。実物を見ながらキイを叩いていますがそれが残念でなりません・・・。 今では制作不可能なこういったジュエリーが一点物と言うのであって、現代のジュエリーの1点物のように1点しか作らないという物とは訳が違うのです! 僕は優れたアンティークジュエリーほど安い物は無いとつくづく思います。もしもこれだけの物を作ったとすればアンティークの数倍の金額になってしまって、且つ、似て非なる出来の悪い物になってしまうのですから・・・。 同じぐらいの価格の現代のジュエリーと比較すればそれは一目同然というものです。 僕は世の中でアンティークを再現したと称する物ほどつまらない物はないと思っています!(笑) どうぞこのジュエリーとの素晴らしい出会いをお楽しみください。 そして永久に貴方だけの物にされては如何でしょうか・・・。
Gen Katagiri
アールデコ ネックレス アクアマリン、オールドヨーロピアン&ローズカット・ダイヤモンド、プラチナ&ゴールド イギリス 1920年頃 5,8cm×3,4cm (チェーン 40,8cm)
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