ファベルジェも手本にした18世紀の素晴らしいギロッシュ・エナメルは、この時代も引き続き作られ、19世紀後期にはジュリアーノやファベルジェの登場で、エナメルを使ったジュエリーや小物が多く作られるようになりました。

イギリスのジュビリーエナメルも19世紀後期に登場したエナメルです。エナメルを使ったジュエリーが、19世紀には多く作られていますが、エドワーディアン以降は格段に少なくなります。特にエナメル・ミニアチュール（細密画）は小箱などの小物以外では、ほとんど見ることがなくなります。アールデコのページ掲載しているラペルウォッチのカメオのようなエナメルは例外中の例外なのです。

エナメルはガラス質ならではの、透明感のある半永久的に退色のない塗料ともいえるのです！！
だから宝石のように美しい塗料なのです！！
しかし、エナメルは単なる塗料と違って極めて高度な技術と手間が掛かるものなので、プラチナ台に宝石セットした新しい感覚のジュエリーの登場で、廃れて行くのです。

歴史上、最も芸術的なルネサンスのエナメル・ジュエリーが、ダイヤモンドをカットする技術が開発され、単に固いだけが取り柄の石から、固くて何にも侵されがたい美しく輝く宝石になった時、ダイヤモンド・ジュエリーが脚光を浴びたのです。

そしてダイヤモンドの粉末を使った宝石をカットする道具が使えるようになったことで、それまでは原石を丸く削ってカボッションカットにするだけだったのが、現代の宝石のようにファセットカット出来るようになり、ルビーやサファイヤのようなあらゆる宝石は、多数の面をカットして石の美しさが発揮出来るようになり、宝石が主役のジュエリーが、芸術性豊かなエナメルワークのジュエリーを舞台の主役から追い落とすことになるのです！

エナメルワークのジュエリーが、その美しい姿を消して行ったように・・・。

残念なことにジュエリーは、ファッションとの密接した関係があるので、流行の移り変わりに大きく左右されるからなのでしょう。
でもその時は忘れられた存在になっても、時を超えて残った物は、その美術的価値を必ず再評価される時が来るものなのです。
僕はロンドンのV&Aミュージアムのジュエリーセクションで、ルネサンスの芸術性豊かなエナメルワークのジュエリーを見る度にそのことをいつも確信しています。


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エナメルについての詳しい説明は《知られざるエナメルの魅力》でご覧下さい。